英検1級合格記(2014年5月)

C3 黒金 玲子

中田英寿に触発されて…

私はサッカーには全く関心がないが、9年前の朝、テレビで中田英寿が何らかの勇断を下したらしいことを知り興奮した。 彼の挑戦に、自分はこのままでいいのかと、刺激を受けたのだ。 
 私は、高校で非常勤教諭として英語を長く教えている。 当時から英語教師の英語力が疑問視されていたが、現場に特に焦りはなく、私も頭の片隅にある悶々とした疑問を放置プレイで過ごしていた。 そこに、中田氏の弾丸シュートがヒットした。 その日の内に、以前から気になっていた茅ヶ崎方式英語会に入会、それと同時に、英検1級の問題集を購入した。 
 茅ヶ崎方式英語会で受ける授業は衝撃だった。 まがりなりにも教員を続けてきた私など、足下にも及ばない講師陣が、ハイレベルな授業をハイテンポで展開していく。 Word Testは知らない単語ばかり。 Listening Comprehension Testは全く聴き取れない。 高校、大学時代、「自分より英語ができる人なんて、身近にそんなにいないわー」などと思っていたのに、とんでもない。 Class3で私は落ちこぼれだった。 これは、衝撃であり同時に喜びであった。 初めて本物の英語力に向き合うことになった。 放置していた膿に、テコ入れだ! 
 しかし、現実は仕事と育児に追われ、予習復習もままならず、膿の治療も半ばのまま、一時は通うことも不可能となり退会。 その後、再入会したものの忙しさは変わらず、出席率も低いが、とにかく行ける時には行くぞと通い続け、少しずつだが確実に手応えを感じ、英検にチャレンジしてもいいかもしれないと思うに到った。 
 私の英検1級の合格は、全面的に茅ヶ崎方式での学習により達成できたものだ。 自分での対策は、エッセイ以外は過去問を解いただけである。 中でも特に効いたのは、毎回の学習マテリアルがニュースであることだ。 英検1級のリスニンングは、英語ニュースが聴ければできる。 リーディングは、英語ニュースが読めればできる。 エッセイは、英語力以前に時事問題が頭に入っていないと書けないが、茅ヶ崎方式の授業ではニュースの背景から説明してくれるので、新聞も読まず時事にうとい私には本当に救いであった。 また、英語でリアルな問題を学び疑問や意見を持つことが、2次試験の対策にもなった。 
 私の膿がなくなったわけではない。 今でも、英字新聞がすんなり読めるわけでも、英語ニュースが瞬時に理解できるわけでもない。 教室に来れば、講師の方々はもとより、隣の席に私が聴き取れない表現をさらりと復唱し、私が知らない単語を使いこなす生徒さんが座っている。 英語教員として恥ずかしく、歯噛みする。 しかし、ここに来れば向上できる。 膿を放置せず、対峙しているというこの感覚が清々しいのだ。 中田英寿のような一流人にはなれないが、このままでいいのか? いや、このままでいるつもりはない、という勇断を、私も自分に下している。



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